気分が良い時用

個人メモ

『起業が「帝国化」する』

意識が高いので新書の書評をば。

タイトルを見てまず思い浮かんだのがアーマード・コアだ。エクソン・モービルやらGEやらに所属する傭兵達による抗争とかフィクションの題材として魅力的極まりない。どうもこの本を読んだ限りBPとかシェルとか、もちろんモービルもなんだけど、そのへんの石油メジャーは実際に途上国のプラントなんかを金で雇った軍隊に警備させてるみたいだ。こいつらがその有り余る資金力を背景に本格的にロボット生産に乗り出し、ファナックあたりと組んで、あそこは産業用ロボットメーカーだから二足歩行は無理か。ともかくフチコマみたいな多脚戦車を開発し、金に汚い傭兵を乘せる。ありがちなストーリー過ぎる。

新書の本筋では、結構分かりきったことを長々述べていた。

  • 大企業は高度で効率的なシステムを作り出し、僕たちは知らないうちにそのシステムに組み込まれている。
  • システムは大きな利益を僅かな対価で生み出しているように思うが、その実僕たちは搾取の対象になっている。
  • サービスを利用している筈が、気がつくと「商品」の側になっている。
  • まあ世の中そんなもんでしょう。なんてったって資本主義です。

    大体そんな感じの主張を軸にして文章は具体例の紹介に移る。食品、IT、石油の3つの分野から世界を牛耳る「帝国」を紹介し、それぞれが如何にあくどく、かつ効率的に僕たちから搾取を行なっているかを述べていく。ここのパートは結構面白かった。徹底したコストダウン、そしてロビー活動によって安定した地盤を手に入れたタイソン・フーズ、節税()に余念がないAmazonやApple、そして石油が湧いた国にハイエナのように群がる石油メジャー。

    いやーあくどい。あくどくって楽しいね。ここまで効率を重視してくれるといっそ清々しささえ感じる。僕自身社会の効率化だとか分業とか新古典派とかは嫌いじゃないので、単純に「帝国」って凄いなーという感想しか抱かなかった。自分が被害者になるという想像力が足らないのかもしれないけれど。

    多分に偏った本であることは間違いない。ただ普段使ってる商品サービスを提供している会社にはこんな一面もあるんだと話半分に聞いとくくらいには良い本のように思った。

    あと書評って書くのむずいと思った。もはや感想。小学生並みの感想である。